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事件概要

事件概要

1986年3月19日午後9時半ごろ、福井県福井市の市営住宅において、卒業式を終えた後に1人でいた女子中学生が、何者かに、自宅台所にあった2本の包丁で全身約50箇所近くを刺されたうえに、灰皿で頭を殴られた後、コードで首を絞められて殺害されるという事件が発生しました。物証がほとんどなく、捜査は難航していた。しかし、事件発生から1年後に、福井県警察は、毒物及び劇物取締法で逮捕されていた男性を、殺人罪で逮捕しました。きっかけは、事件発生から約1年後に得られた5人の目撃証言、事件現場に落ちていた被告の毛髪に加え、未決勾留中の元暴力団組員の証言でした。

求刑より軽い懲役7年の逆転有罪判決

求刑より軽い懲役7年の逆転有罪判決

福井地方裁判所で行われた第一審では、1990年9月26日に、殺人については無罪判決(求刑懲役13年)が言い渡された。検察は、これを不服として控訴、名古屋高等裁判所金沢支部で行われた控訴審では、1995年2月9日に、懲役7年の実刑という逆転有罪判決が言い渡されました。犯行現場で被告を見たという目撃証言は十分信用でき、暴力団組員の供述についても調書が作成された時点では、覚醒剤取締法違反容疑の取り調べは終了していたとして、信用性を認定。毛髪についても、弁護側、検察側のいずれかが信用できるという判断は下せないとしながらも、検察側の鑑定では被告が現場にいた1つの資料になりうるとした。しかし、被告が当時は心神耗弱の状態にあったことを考慮して、求刑より軽い懲役7年としています。

13位:立川反戦ビラ配布事件

控訴審で逆転有罪

控訴審で逆転有罪

立川反戦ビラ配布事件は、2004年1月から2月にかけて、反戦ビラ配布の目的で立川自衛隊官舎内に立ち入った3名が、住居侵入罪の容疑で逮捕・起訴された事件です。一審では無罪判決。検察が控訴し、控訴審では罰金20万円または10万円の有罪判決。被告人は即日上告したが、最高裁で棄却され東京高裁の有罪判決が確定しました。ビラ配布は「憲法が保障する政治的表現活動」で「民主主義社会の根幹」と位置づけ、「刑事罰に値する違法性はない」とした一審判決の論点をいっさい無視する内容に、強い批判の声がでています。

12位:名張毒ぶどう酒事件

事件概要

事件概要

1961年3月28日夜、三重県名張市葛尾の公民館で、地元の生活改善クラブ「三奈の会」の懇親会が行われました。この時、女性会員用に用意されていたぶどう酒の中に農薬が混入されており、乾杯と同時にそれを飲んだ女性会員のうち5人が死亡、12人が傷害を負うという事件が発生しました。この死亡した5人の女性の中に奥西勝氏の妻および愛人が含まれていたことから、奥西氏に殺人罪、殺人未遂罪の嫌疑をかけられました。奥西氏は当初否認していましたが、捜査機関の厳しい取調べにより自白に追い込まれ、その後、否認、自白と変転し、捜査の最終段階で再び否認し、以後一貫して無実を訴えました。

第一審の無罪判決が控訴審で破棄されて逆転死刑判決が言い渡され、それが確定した事件は、戦後に現行の刑事訴訟制度が発足して以来初めて

第一審の無罪判決が控訴審で破棄されて逆転死刑判決が言い渡され、それが確定した事件は、戦後に現行の刑事訴訟制度が発足して以来初めて

1964年12月23日に第一審、津地方裁判所は証拠不十分を理由に検察側の死刑求刑を退け、奥西に無罪判決を言い渡します。しかし1969年9月10日の控訴審判決では第一審の無罪判決を破棄自判し、奥西に逆転死刑判決を言い渡しました。有罪か無罪かの事実認定をめぐって一・二審の判断が相反し、第一審の無罪判決が控訴審で破棄されて逆転死刑判決が言い渡され、それが確定した事件は、戦後に現行の刑事訴訟制度が発足して以来初めてでした。

11位:徳島公安条例事件

法律と条例制定権の範囲について示した判例として著名

法律と条例制定権の範囲について示した判例として著名

労働組合員のAは、デモを行った際、道路使用許可の条件に反して車道上を蛇行したため、道路交通法違反と徳島市条例違反に問われた。条例の罰則は道交法違反の罰則よりも重くなっており、Aはこのような条例は憲法94条の「条例は法律の範囲内でのみ定める」の規定に違反しているとして訴えました。

最高裁で逆転有罪判決

最高裁で逆転有罪判決

第1審の徳島地裁は、道路交通法違反の点について被告人を有罪としたが、徳島市公安条例違反の点については無罪とした。 控訴審の高松高裁も、本条例3条3号の規定が刑罰法令の内容となるに足る明白性を欠き、罪刑法定主義の原則に背き憲法31条に違反するとした第一審判決の判断に過誤はないとして、検察官の控訴を棄却。しかし最高裁ではこれら判決を破棄し、徳島市公安条例違反について有罪を言い渡しました。徳島市公安条例では、「交通秩序を維持すること」との文言が問題となりました。これが「曖昧だ」という主張が、Yであり、1審、2審だったのですが、最高裁は、通常の判断能力を有する一般人の理解ができるから「曖昧ではない」という結論を出しました。

10位:葛飾政党ビラ配布事件

罰金5万円の有罪判決

罰金5万円の有罪判決

葛飾政党ビラ配布事件は、東京都葛飾区のマンションの戸別ドアポストに男性が日本共産党の議会報告とアンケート用紙等を配布していた際、居住者によって現行犯逮捕され、住居侵入罪により勾留・起訴された事件です。検察の求刑、罰金10万円に対して第一審判決は無罪、控訴審は無罪判決を破棄し、罰金5万円の有罪判決、その後の最高裁で罰金5万円が確定します。控訴審判決では、居住者の意思は明確になっていると認定されており、被告人はそれに反して立ち入ったことから、住居侵入罪の成立が肯定されました。

9位:迎賓館ロケット弾事件

新左翼の中核派が起こしたテロ事件

新左翼の中核派が起こしたテロ事件

迎賓館ロケット弾事件とは、1986年5月4日に東京都で発生した、日本の新左翼の中核派が起こしたテロ事件です。1986年5月4日午後4時20分頃、東京都新宿区矢来町のマンションの4階の一室からロケット弾の一種である迫撃弾が発射された。標的はここから2.5キロ離れた迎賓館で、この時間は先進国首脳の歓迎式典が挙行されていた。しかしロケット弾は迎賓館を飛び越えて1キロ離れた道路上に着弾したため、迎賓館に被害はなかった。

控訴審では「審理不十分」を理由に地裁に差し戻し

控訴審では「審理不十分」を理由に地裁に差し戻し

警視庁公安部は爆発物取締罰則違反で1987年に中核派活動家3人(A、B、C)を逮捕。検察はAに懲役15年、BとCに懲役13年を求刑したが、2004年3月25日、東京地方裁判所は、メモ類には事件に直接触れた記載はないことを理由に3人を無罪に。二審の東京高等裁判所は2006年5月19日に「審理不十分」を理由に地裁に差し戻し、2007年10月16日に最高裁判所も被告人側の上告を棄却したため、一審からやり直すことになります。差戻後の第一審において、東京地方裁判所は、2010年6月2日にAに懲役11年、BとCに懲役8年を言い渡し、2016年3月14日、最高裁が上告を棄却し有罪判決が確定しました。

8位:猿払事件

国家公務員法第102条・人事院規則14-7に違反するとして起訴

国家公務員法第102条・人事院規則14-7に違反するとして起訴

北海道猿払村において、郵便局員(当時は公務員)であったAは、特定の政党を支持する目的をもって、選挙用のポスターを公営掲示場に自ら掲示したり、ポスターの掲示を依頼したりしました。このような行動が、国家公務員法第102条・人事院規則14-7に違反するとして、Aは起訴されました。

判断が分かれた判決

判断が分かれた判決

1968年3月25日の旭川地裁は弁護側の主張を認め、無罪判決。1969年6月25日の札幌高裁は表現の自由の意義を強調し、アメリカの憲法判例で用いられる「より制限的でない他の選びうる手段」の基準(LRAの基準)を準拠した上で無罪判決を支持。1974年11月6日に最高裁は二審無罪判決を破棄する判決を言い渡し、5000円の罰金刑とする有罪判決が確定した。ただし、有罪・合憲とする裁判官は11人であり、一方で違憲・無罪とする裁判官は4人おり、判断が分かれた判決でした。

7位:砂川事件

日米安全保障条約の憲法適合性が争点になった有名な事件

日米安全保障条約の憲法適合性が争点になった有名な事件

砂川事件は、昭和30~32年(1955~1957)、東京都下砂川町で起こった、米軍立川基地拡張に反対した闘争です。政府は警官隊を動員して測量を強行したが、住民・労働者・学生も大量動員で対抗、流血事件も発生。 裁判では、初めて日米安全保障条約の憲法適合性が争点になった有名な事件です。

「統治行為論」が展開され、第一審の判決を覆す

「統治行為論」が展開され、第一審の判決を覆す

東京地裁は、駐留米軍が憲法第9条第2項によって禁止される「戦力の保持」に該当するとして無罪を言い渡しました。これに対し、検察側は直ちに最高裁判所へ跳躍上告。最高裁判所においては、「統治行為論」が展開され、第一審の判決を覆すこととなります。統治行為論とは、高度に政治的な問題については、法律上の争訟として判断が可能であったとしても、裁判所が審査を行うべきではないとする理論のことです。「一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは」と前置きし、原判決を破棄し地裁に差し戻しました。再度審理を行った東京地裁は1961年3月27日、罰金2,000円の有罪判決を言い渡しました。

6位:旧清川村強盗殺人事件

事件概要

事件概要

旧清川村強盗殺人事件は、2005年3月に大分県・大野郡清川村(現:豊後大野市)で起きた強盗殺人事件です。大分県清川村(現豊後大野市)で2005年3月19日に女性の殴られた状態の遺体が自宅裏庭で見つかった。乗用車が奪われていた。大分県警は、2007年2月、被害者と顔見知りでこの事件とは別の窃盗罪により服役中だった被告を強盗殺人、窃盗、住居侵入の罪で逮捕した。当初は容疑を否認していたが、数日後に容疑を認めた。検察はこれを受けて2005年3月8日に被害者宅に侵入して現金13万円を盗んだうえに、同14日に被害者宅に侵入してコンクリートの塊で被害者を殴り倒してビニール紐で首を絞めるなどして殺害した後に乗用車や商品券を奪った容疑で逮捕していた被告を起訴しました。

「自白には秘密の暴露があり信用性が高い」

「自白には秘密の暴露があり信用性が高い」

被告は当初は容疑を認めていたものの、公判では無罪を主張。被告と犯行を結び付ける直接的な物的証拠などはなく、自白したとされる供述調書の証拠能力が争点となり、2010年2月23日に1審・大分地裁は無罪。検察側はこの判決を不服として控訴し、2013年9月20日に福岡高裁本庁は「自白には秘密の暴露があり信用性が高い」として一審の無罪判決を破棄し、求刑通り被告に無期懲役を言い渡した。被告は即日上告した。2015年10月6日、最高裁で無期懲役判決。確定した。

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