2021年2月、フランスのパリで日本人が塩酸をかけられ、手にやけどを負う被害に遭ったと、在仏日本大使館が注意を呼びかけました。パリ17区の公共の場所で日本人被害者が友人と3人で歩いていたところ、フードを被って下を向きながら加害者の3人組が歩いてきた。不審な感じもしていたので注意していると、うち1人が液体の入ったボトルを取り出したため、とっさに手で顔を覆ったが、いきなり顔に向けて液体をかけられた。すぐに逃げて、医者にかかると、液体は塩酸だと分かり、手にやけどを負いました。

2019年にもパリのメトロの中で硫酸を使ったアシッドアタックがあったようですが、事件当時のフランスではアジア人狩りのようなことが行われていたため、新型コロナウイルス関連によるアジア人差別ではないかと言われています。

インド人女性のラクシュミー・アガラワルさんは、15歳の時に兄の同級生だった32歳の男性からの求婚を断ったことを逆恨みされ、アシッドアタックを受けます。

10週間の入院中、ラクシュミは顔の皮膚を全て取り除く治療を受け、退院後も数え切れないほどの手術を受けました。少しずつ傷は癒え、顔や腕の傷みも和らいでいきましたが、周りの冷たい反応が一番苦痛だったとラクシュミさんは語っています。

後に同じようにアシッドアタックを受けた女性たちと会うようになり、活動の幅を広げ、アシッドアタック撲滅・被害者救済のための活動を始めます。その活動を認められ、様々な賞を受賞、さらに2020年には彼女をモデルにした「Chhapaak」という映画も制作され、世界中の注目を集めました。

この事件は、インド人女性のソナリ・ムカジーさんが18歳のころ、自宅の屋上で寝ていた時に3人組の男に襲われ、抵抗したら顔に強酸性の液体をかけられるというアシッドアタックを受けたものです。ソナリ・ムカジーさんは失明し、聴力も低下、顔面のいたるところが焼けただれました。

再建手術のために、家族は家や財産を売り払い医療費を捻出しましたが、お金は足りず、手段としてインドの人気番組「クイズ・ミリオネア」に出演することを決意。2012年に「クイズ・ミリオネア」に出演したソナリ・ムカジーさんは250万ルピー（390万円）を獲得しますが、元通りになるにはまだ足りないということです。

この事件は、1956年4月5日に、マフィア問題を追及していたジャーナリストでコラムニストのビクター・リーゼルが、マフィアの幹部であるジョン・ディオガルディから指示を受けた実行犯にアシッドアタックを受けた事件です。

このアシッドアタックで、被害者のビクター・リーゼルは両目を失明してしまいますが、被害者はこの事件の後も、犯罪撲滅のための活動をつづけています。実行犯は報酬を上乗せするように迫ったため、事件の4か月後に射殺体となって発見されています。

この事件は、2018年7月31日に、ウクライナの反汚職活動家であり、ヘルソン市長顧問をしていたカテリーナ・ハンジュークさんが、見知らぬ男に1リットルもの硫酸をかけられるアシッドアタックを受けたものです。

この事件でカテリーナ・ハンジュークさんは、上半身や腕、顔などに大やけどを負い、重体に陥り、10回以上の手術を受けたにもかかわらず入院先の病院で死亡しています。

ハンジュークさんは、法執行機関とりわけ警察の汚職を公然と批判していましたが、ウクライナでは近年、反汚職活動家らに対する襲撃が増えていたことから、その身を心配する声が広まる中での事件に衝撃が広がりました。

欧州連合（EU）欧州委員会のヨハネス・ハーン委員（欧州近隣国政策担当）はツイッターでハンジュークさんの死を悼み、「市民社会の活動家に対する襲撃は容認できない」と非難しています。

2013年1月17日の深夜、ボリショイ・バレエ団の元トップダンサーで2年前から、芸術監督に就いていたセルゲイ・フィーリン（42）が何者かに襲われました。帰宅時のマンション入り口で突然、覆面姿の「見知らぬ男」が近づいてきて男は持っていた硫酸をかけて逃走。フィーリンは重度の火傷を負い、収容先の救急病院で手術を受けました。

ボリショイ・サーカス内で、バレリーナのアンジェリーナ・ヴォロンツォワがフィーリン氏に冷遇されたために、恋人のドミトリチェンコがフィーリン氏の襲撃を計画したものとみられ、事件当時は、世界中に大きな衝撃を与えました。

2017年4月、リアリティー番組の有名タレント、ファーン・マッキャンさんの元恋人、アーサー・コリンズがロンドン・イーストエンドのクラブに酸を投げ込み、16人にやけどを負わせ、3人を失明させた事件が発生、世間を震撼させました。

クラブ内には600人の客がいたそうで、一歩間違えれば大惨事につながる事件でした。アーサー・コリンズは禁固20年の実刑判決を受けています。ファーン・マッキャンは彼の子供を妊娠していたようで、シングルマザーとして子供を出産することを宣言し、2017年11月に出産しているそうです。

現在はTVプレゼンターや活動家として活躍しているイギリス人のケイティ・パイパーさんは、2008年にレイプされ、その2日後にアシッドアタックを受けるという痛ましい事件の被害者です。

24歳のころ、とても美しかったケイティ・パイパーさんはFacebookで知り合った男性と直接会うことになり、その時にその男性にレイプされてしまいます。さらに、その2日後にレイプした男性の仲間に硫酸をかけられて、彼女の美しい顔は見るも絶えない姿に変貌してしまいました。

すぐに救急搬送されましたが、顔全体が焼けただれ、片目は失明するという重傷を負います。しかし、ケイティ・パイパーさんは、事件の翌年に「ケイティ・パイパー財団」を立ち上げ、火傷や事故による傷跡の治療を提供する活動を始め、また、自身も300回を超える顔の再建手術を受け、以前と変わらぬ美しさを取り戻したことで、今ではアシッドアタックによる被害者の希望ともいえる存在になっています。